簡易な測定で秋月で売っている LM358 の波形を観測してみました。商品カタログには FAIRCHILD, HTC, National Semiconductor, STMicroelectronics が有ります。 そのうち秋葉原店頭で見かけた FAIRCHILD(以下 FC), HTC, National Semiconductor(以下 NS) を取り上げます。
FAIRCHILD LM358N | HTC LM358N | National Semiconductor LM358N |
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各測定で使う電源は USB VBUS+ を使った +5.27V(=Vcc) です。正確に +5V に合わせていません。OP Amp で測定に使う普通の電圧(単電源で 30V)より低くなっています。 発振器は LMC555 を使いました。Duty 50% で 10KHz の矩形波を発振する回路を構成し、74HC04 でバッファして出力してます。電源の 1/2 電位を中心に 10KΩ x 2 を使って、電源電圧 1/2 の振幅を 作り LM358 に接続しています。LM358 に入力される波形は、下端 (Vcc * 1/4) Volt、 上端 (Vcc * 3/4) Volt です。下は発振器の回路図です。
FC と HTC は似た様な挙動をしていました。立ち上がりの Slew Rate はどちらも 0.17V/us。立ち下がり slew rate は 0.18V/us。随分と遅い様に見えます。しかし、LM358 で Slew Rate の規格を定めているのは TI, ST Micro など一部のメーカーだけの様です。これらが示す値は 0.3V/us になっていて、電源電圧は定格内で最も高い電圧です。データーシートによっては波形サンプルを示している物も有ります。サンプルから読み取れる slew rate は 0.48 - 0.50V/us 程あります。実際と比べて良すぎる気がします。LM358 に対して slew rate を期待してはいけないのかも。
FC, HTC とも NS に比べて立ち上がりの始まり付近で小さなヒゲが見ます。電圧増幅段の所にスイッチング特性改善用と思われる抵抗が BE 間に入っていないためと考えています。代わりに出力段の上側ダーリントン構成の BE 間に抵抗を入れて改善を試みている様です。効きが良くないのかもしれません。
NS は立ち上がり slew rate は 0.24V/us, 立ち下がり slew rate は 0.25V/us です。FC, HTC と比べて早くなっています。僅かに立ち下がりの終わり付近のオーバーシュートが大きめになっています。slew rate が良いせいなのか、飽和動作等のスイッチング的な動作が原因なのかは見切っていません。
LM358 の設計者はスイッチング動作、あるいは矩形波入力に対する応答に良い特性を期待されるとは思っていないでしょう。ちょっとしたヒゲの改善が必要であれば、pull up または pull down などの方法を使ってほしいと願っているはずです。
FC と HTC を出力 open で動作させた時に見られた立ち上がり開始付近のヒゲは消えています。出力段の下側トランジスタが常に電流を流す状態になるので、OP Amp 内部も飽和動作にならずに済んでいるはずです。FC, HTC, NS とも slew rate に大きな変化はありません。0.0 - 1.0V 付近の出力が必要無い場合は pull up するのが使い方の一つだと思います。
FC, HTC, NS とも 1KΩで pull down した場合、正側の振幅は不足しています。3.95V に届いていません。これはいずれも規格の通りの挙動です。もし、3.95V が出たとすると、3.95mA 吐き出す事になります。しかし、規格で無理な事が示されています。出力段の上側はダーリントン構成で 4mA を吐き出す場合、最大振幅電圧は電源電圧よりおおよそ 1.5V 程低い電圧までです。入力信号が立ち下がってから出力が下がり始めるまでに時間が空いている様に見えるのは、振幅不足分を過ぎるまで、出力が変化しないためです。
HTC は FC, NS と比べると 50 - 100mV 程最大電圧が低くなっています。これは規格通りです。HTC は少し電流の吐き出し能力が低いのかもしれません。
電源電圧から、1.2 - 1.5V 下がった範囲までの出力が不要な場合は、pull down しておくのが使い方の一つだと思います。
FC, HTC, NS とも スルーレートに大きな変化はありません。